フリーランスや個人事業主として独立して仕事をしているものの、さまざまな理由により、改めて正社員・会社員に戻りたいと考える人も少なくないと思います。
結論からお伝えすると、フリーランスから再就職・転職をして正社員に戻ることは十分に可能です。(実際、私が過去にフリーランス→正社員への転職を行った経験があります)
ただし、フリーランス→正社員の転職に関しては、ネットで検索をしても出てくる情報のほとんどすべてが転職サイトや転職エージェントが運営しているメディアの情報ばかりです。
彼らは人を転職させるのが仕事なので「フリーランスでも問題なく正社員に転職できます!」としか書いてありません。
しかし、実際にフリーランス→正社員へ転職したことがある私からすると、ネットにある情報は片手落ちだったり、一部間違っていたりする情報も多いと感じています。
私自身、フリーランスから正社員へ戻ろうと考え、転職関連の情報をネットで検索していた時に“リアルな実体験”の情報がないことに大きな不安を抱いていました。
そこで、当時の私と同じような不安を抱えているであろうあなたへ向けて、フリーランスから再就職・転職をして会社員へ戻ることの実情と、スムーズに正社員へ戻る方法について解説していきます。
フリーランスから正社員に就職・転職することは可能ではある
冒頭でもお伝えしましたが、フリーランス・個人事業主・起業といった仕事形態を経てから正社員・会社員へ転職することは可能です。
ただし、現実をお伝えすると、「フリーランスから会社員へ転職」するのは「会社員から会社員へ転職」することよりもハードルは高いのもまた事実です。
まずはこの現実を受け入れることが大切だと思っています。
私自身、フリーランス時代にこの事実を知らずに転職活動をはじめたため、多くの苦労をすることになりました。
ですので、あなたがいまフリーランスとしてお仕事をしていて会社員に戻る場合は、それ相応の努力が必要になる前提で転職活動を行っていく必要があります。
フリーランスから会社員への就職・転職が難しい理由
「会社員→会社員」への転職と比較した場合ですが、フリーランスの転職活動は苦戦を強いられる可能性があります。
それは以下のような理由によるものです。
- 面接官にとってフリーランスは未知のキャリアだから
- 協調性に対する懸念があるから
- 現年収に見合うオファーを出せるか不明確だから
逆に言えば、これらの事実を理解した上で面接の対策をすれば、何も知らずに転職活動をするよりもスムーズに転職を成功させられます。
面接官にとってフリーランスは未知のキャリアだから
ほとんどの会社の面接官は、会社員しか経験をしていない人たちです。
このため、「フリーランス」という働き方に対する理解は浅く、話が噛み合わない事も多々あります。
まずはこの大前提を意識しておくことが大切です。
あなたが今まで真面目にフリーランスとして仕事をしてきていても、面接官にとってあなたは「よく分からない存在」ですし、「自社でどれくらい活躍してくれるのか分からない存在」なのです。
極論、面接での評価がほとんど同じ「会社員」と「フリーランス」のどちらか一人を採用することになったとしたら、ほとんどの面接官は会社員の方を採用するでしょう。そのほうが無難でリスクが少ないからです。
こういった事情により、フリーランスの転職は相対的にハードルが高くなります。
協調性に対する懸念があるから
フリーランスとして一人で仕事をしている場合、企業から見ると「この人は協調性があるのだろうか」という懸念が生じます。
会社ではチーム力やカルチャーフィットが重視されるため、この点においてフリーランスはどうしても不利な見られ方をします。
また、実際のところ「会社の人間関係やしがらみが面倒で、一人で気ままに仕事ができるフリーランスになった」という人も多いと思います。(当時、私も会社員を辞めた理由の一つとしてこれはありました…)
実態がどうであれ、世間からは協調性に懸念があるイメージを持たれがちです。
実体験として、私自身がフリーランスから会社員への転職活動をしていたときには「協調性やチームプレイに問題がないか」を面接の場で聞かれることは少なくありませんでした。
現年収に見合うオファーを出せるか不明確だから
フリーランスとしての仕事がうまくいっている人の場合、会社員では到達しにくい月収(月商)を得ている人もいると思います。
こういった人に対して、企業としては「この人に見合った年収オファーをうちの会社が出せるのか」が分かりにくいものです。
場合によっては、年収が下がる覚悟も必要になるでしょうし、年収が下がっても問題ない意志を面接の場で示す必要があります。
とはいえ、フリーランスとしての収入面で苦労していて正社員への就職を考えている場合は、年収面に対する心配はそこまでしなくても良いと思います。
私がフリーランスから正社員への再就職・転職を考えたリアルな理由
転職活動をはじめるにあたって、フリーランスを辞める理由を整理することは大切です。
フリーランスから正社員への再就職・転職を考える理由として、一般的には以下のような理由が挙げられると思います。
- 安定した収入を得たいから
- 一人で孤独に仕事をするのが大変だから
- チームで仕事をしたいから
- スキルアップできる仕事をしたいから
- マネジメントスキルを磨きたいから
人によって転職理由はさまざまだと思いますが、フリーランスから正社員への転職を考えるときは「本当に再就職をして良いのか?」という葛藤があるはずです。
当時、私もこの葛藤があり、かなり悩みましたが、最終的に以下のような理由により転職することを決意しました。
収入に対する不安があった
私がフリーランスから会社員へ転職したのは、本音を言えば収入に対する不安が一番の理由でした。
フリーランスとして上手くいっている時期は、月に100万円近くを稼いでいた時もありますが、最後の頃は月数万円まで収入が下がってしまった時もありました。
もちろん、収入の乱高下は私の実力不足でしかないのですが、この先も10年、20年、30年と収入が下がっては増やす努力をして、増えても維持し続ける努力をして……という生活を続ける自信がなくなってしまったのです。
貯金や年金など将来に対する不安があった
収入に対する不安とも関連しますが、当時は毎月の収入の変動も大きかったため、「毎月○万円を貯金する」といったことも上手くできていませんでした。
また、国民年金にしか入っていなかったので、「将来的にサラリーマンを何十年も続けた人よりも年金額が少なくなる」という不安もありました。
確かに、私たちの世代が年金をもらう側になった時に、実態がどうなっているかは誰にもわかりません。
ですが、少なくともその時点での制度上では明らかにもらえる年金額は少なくなってしまう試算だったため、その点も不安としては大きくありました。
プライベートと仕事の線引きがないから
私は会社員を辞めて独立してから4年ほどフリーランスのような立場で仕事をしていましたが、その間で丸1日仕事を休んだのは、おそらく10日間もなかったと思います。
好きで仕事をやっていたので、この点は特に不満というわけではなかったのですが、それでも「完全に休んでしまうと収入に直接影響があるから不安」といった感情も少なからずありました。
会社員の場合、休日はしっかりと休むことができますし、有給という神制度も存在します。
ワーク・ライフ・バランスを考えると、会社員としての働き方も良いのかもと当時は考えました。
もっと大きな仕事に取り組みたいと考えたから
自分一人で仕事をしていた時は、当たり前ですが、お金・時間・人すべてが会社員時代と比べれば全然足りません。
やはり「会社」という組織は凄いもので、お金がかかるプロダクトを生み出すことができたり、個人では捻出できない広告費を出せたり、人海戦術で事業を拡大したり、といったことができます。
スケールが大きい仕事をしようと思ったら、自分一人で大きいスケールを目指すよりも、すでに会社が作ってくれている大きいスケールに乗っかって仕事をした方が早くて確実だとも考えました。
フリーランスから会社員を目指すときに重要な面接のポイント
フリーランスから会社員への転職を実現させたい場合、一般的な転職面接で重要なポイントは同じです。
ただし「会社員→会社員」への転職時とは意識すべきポイントが少し異なります。
私自身がフリーランスからの転職を実現できたときに感じたこと、経験したことから面接時の重要ポイントは以下の通りです。
- フリーランスになった理由を整理する
- フリーランスを辞める理由を整理する
- 仕事に対して真摯に向き合った事実や実績を伝える
- 協調性を発揮したエピソードを準備する
- 会社員として頑張っていきたい固い決意を伝える
フリーランスになった理由を整理する
フリーランスが会社の面接を受けに行くと、100%と言っていい確率で「フリーランスになった理由」を聞かれます。
注意点としては、実際の理由の中から、面接の場にふさわしい理由を用意するのが良いです。
例えば、以下のような理由が事実であったとしても、これらを伝えたら面接官からの印象は悪くなります。
- 社内の人間関係が面倒だった
- 会社員としての収入に不満だった
- 朝起きるのが苦手で自分の好きな時間に仕事をしたかった
- 会社の飲み会が苦痛だった
一方で、以下のような理由は、向上心・成長意欲・前向きな姿勢などを伝えられるので、面接の場でふさわしい理由になります。
- 会社の看板なしで自分のスキルが通用するのか試したかった
- ビジネスパーソンとして成長するために全責任を自分で背負ってみようと考えた
- ○○の分野で本気で事業に取り組んでみたかった
上記はあくまでも一例ですので、あなたがフリーランスになった理由を整理して、面接の場で受けが良さそうな理由を伝えられるようにしておきましょう。
フリーランスを辞める理由を整理する
「会社員→会社員」への転職でも同様ですが、現職(今回の場合はフリーランス)を辞めて別の環境に移ろうとしている理由は必ず聞かれます。
「フリーランスになった理由」と同様で、複数ある理由の中から、できる限り前向きな理由を選択して伝えることを意識してください。
仕事に対して真摯に向き合った事実や実績を伝える
フリーランスとして、どんな実績を上げてきたか、どんなプロジェクトに関わってきたか、どんな結果を残したかはしっかりと伝えた方が良いです。
なぜなら、人によってはフリーランスに対して偏見を持っている可能性もゼロではないからです。
事実、最近では「とりあえずフリーランスになろう…」といったノリと勢いで会社を辞めてしまう人も少なくないため、面接官からすると「この人は本当に仕事ができるのだろうか?」と疑いの目を向けてくるケースもあります。
「会社員→会社員」への転職時よりも、意識してより丁寧に自身の仕事の実績や、仕事を通じて学んだことを伝えられるように準備しておくことをお勧めします。
協調性を発揮したエピソードを準備する
フリーランスの方を面接する場合、面接官は協調性に対して不安感を抱きます。
このため、協調性があること、会社員としても問題なく組織に馴染めること、チームプレイで仕事を進めていきたい、などを具体的なエピソードとして準備しておきます。
過去に会社員として働いた経験があるのなら、その時の経験も交えて話しても良いでしょう。
また、フリーランスとして取引先とチームを組んでプロジェクトを進めた経験があるのなら、そういった経験を伝えるのも良いと思います。
とにかく「私は組織で働くことも全く問題ありません!」というメッセージをしっかりと伝える必要があります。
ここが抜けてしまうと、あなたがどんなにスキルが高くても採用されることはまずあり得ません。
会社員として頑張っていきたい固い決意を伝える
面接官からすると「この人はまたフリーランスに戻る可能性があるのでは?」とも考えています。
採用する側としては、できるだけ長く安定的に働いてもらいたいものなので、今後は会社員として頑張っていきたい意思を示すのが良いです。
仮に、心の中で「機が熟したらまた独立したい」、「数年後に改めてフリーランスに挑戦する」などを思っているのはもちろん問題ありません。
ただ、それは表に出さず「今後は会社員として、組織の一員としてチームプレイで仕事をしていきたい」という意思を示しましょう。
【注意】フリーランス時の取引先への安易な再就職・転職は絶対にやめるべき
いざフリーランスから会社員へ戻ろうと思った時に考えがちなのが、フリーランスとして取引がある会社や知り合いの社長の会社へ転職することです。
この方法を安易に勧めている人もネット上には多いですが、個人的には絶対にやめるべきだと思っています。
理由は、この方法で転職をしてしまうと、あなた自身の可能性が制限されてしまい非常に勿体ないからです。
どういうことかと言うと、普通に転職活動をすればもっと良い条件で転職できるかもしれないのに、既存の繋がりの中で妥協してしまう可能性があるということです。
私の実体験をお伝えすると、フリーランスから会社員へ転職しようとした際に、知り合いの社長さんから「うちの会社に来ますか?」と誘っていただきました。
それ自体はとてもありがたい話ですが、軽く条件を聞いてみると、私が望んでいる年収ではなかったため、その話はお断りしました。
その後、普通に転職活動を行った結果、知り合いの会社へ就職した場合よりも100万円ほど高い年収で転職することができました。
私の場合は年収面で妥協してしまうリスクがあったわけですが、それ以外にも今後やっていきたいと仕事やポジションなど、普通に転職活動を行うことで、既存の繋がりだけでは得られなかった転職先と出会える可能性は十分にあります。
このため、もし既存の取引先から好条件を提示されたとしても、他の会社も色々と見比べた上で意思決定するのがベストだと強く主張したいところです。
フリーランスから正社員への再就職・転職を成功させる方法
フリーランスから会社員へ転職する場合、少なくとも最初の段階では一般的な転職活動を行ってみるべきです。
具体的なやり方としては、転職エージェントを活用するのが良いでしょう。
「会社員→会社員」の転職活動よりも苦戦する可能性が高い「フリーランス→会社員」の転職の場合、転職のプロであるエージェントの力を借りるのは有効です。
実際、私自身がフリーランスから会社員へ就職したときは、転職エージェント経由で転職をしました。
転職エージェントを活用することで、自分自身の転職市場での価値を客観的にフィードバックしてもらえますし、転職に必要な書類作成や転職面接の対策なども無料で行ってもらえます。
特に、職務経歴としてフリーランスしか経験したことがない人や、今まで「会社員→会社員」の転職をしたことがない人は、素直に転職エージェントの力を借りるのが一番です。
また、最近では「フリーランス」という働き方も以前より一般的になってきているため、転職エージェントの中にも「フリーランス→会社員」へ転職した人たちのデータも溜まってきている印象です。
他の転職者がどのように企業へ転職していったのかの情報は、確実に役立つと思います。
フリーランスから会社員へ戻る際に気を付けるべき事
当時、私がフリーランスから会社員への転職を考え始めた時に不安に思っていたのは「自分は会社員としてやっていけるのか?」という点です。
これが不安で、なかなか会社員に戻る決断ができないフリーランスの方も多いのではないでしょうか。
私がフリーランスから会社員へ戻る時に、どのように心の整理をして、何を考えて会社員へ戻ったのかは今後の参考になるかもしれないので、最後にお伝えしておきます。
フリーランスとして活動してきたプライドは捨てる
フリーランス・個人事業主・起業家など自分自身の力だけで仕事を獲得し、収入を得ていた方は、自分が今までやってきたことに対してプライドを持っていると思います。
正直、当時の私も「自分は会社の看板に頼らずに飯を食ってきた」といった自信のようなものがありました。
この自信を自分の中だけで持ち続けるのは自由です。
ですが、面接の場や入社後はこのプライドを(表向きだけでも)捨てた方が良いでしょう。
これはフリーランスから正社員に転職する場合に限らずですが、前職に対して過剰なプライドを持っている人はシンプルに嫌われます。
入社後に、その会社でうまく人間関係を築いていきたいのであれば、変なプライドは捨てて謙虚にイチから会社員として頑張っていく姿勢で臨むのが良いと思います。
理不尽なこと・非効率なことに目をつぶる勇気を持つ
一般的な傾向として、フリーランスとして仕事をしている時よりも、会社員として組織で働いている時のほうが理不尽なこと・非効率なことは多くなります。
例えば、上司からの指示で自分の考えとは相容れない仕事をやらされる……といった経験は、会社員であればきっとあるでしょう。
他にも会社組織には非効率なことも多くあります。
とはいえ、こういった事にいちいちストレスを感じていると疲れるので「会社員とはそういうものだ」と割り切る勇気も大切です。
また、社内で非効率なことが行われていたとしても、いきなり非効率であることを指摘してしまっては人間関係が悪化します。
自分一人で売上・経費をすべて管理して、全責任を負って仕事をしてきたフリーランスの方からすると、ついつい指摘してしまいたくなるようなことが会社の中にはたくさん存在します。
しかし、社内で良い人間関係を築き、良いポジションに収まっていきたいのであれば、多少のことには目をつぶる勇気を持つことも大切です。
もし、そういった非効率なことを改善していきたいとしても、それは入社後すぐにやるべき事ではなく、入社した会社で成果・実績を出した後に徐々に行っていくべきことです。
実際、私自身はこの2つの意識を持って、その後の会社員生活を送っているため、いい意味で無難な人間関係を築けていますし、会社という組織に馴染むことができています。
[…] 【実体験】フリーランスから再就職・転職して正社員になる方法を解説 […]