フリーランス・個人事業主として仕事をしている人の中には「そろそろ結婚したいな」と思いつつも、フリーランス特有の将来の不安などを理由に、なかなか結婚に踏み切れない人もいると思います。
私自身、個人事業主として仕事をしていた中で30代になって結婚しようと思った時に、自分自身のキャリアについて改めて考え、キャリアの再設計をしました。
そんな経験も踏まえ、この記事ではフリーランス特有の結婚に関するリアルな悩み・不安に対して、過去の経験を通じて参考になる情報をお伝えしていきます。
フリーランス・個人事業主の方が、実際にどんなことを考えて、結婚したり(結婚しなかったり)というリアルな実体験を詳しく知れる機会は少ないと思いますので、何かの参考にしていただければ幸いです。
なお、記事内では「フリーランス」と「個人事業主」は同じ意味で使っています。
【体験談】結婚をきっかけに個人事業主のキャリアを再設計した話
私自身が当時、どんな状況で、どんなことを考え、同棲→結婚に至ったのかをお伝えします。もし、あなたがいま、当時の私と同じような状況で悩んでいる場合、なんらかの参考になるのではないかと思います。
私の場合、なかなか結婚に踏み切れなかったのは以下のような不安・心配からでした。
- 自分の収入が激減したら相手に迷惑をかけてしまうのでは?
- 入居審査などのときに収入面で審査落ちしてしまうのでは?
- 相手の親に仕事のことをどんな風に説明しようか…
- この先、5年、10年と収入はあるのだろうか…
結婚に踏み切れなかった理由:貯金が少なく、社会的な信用も低い)
当時の私は個人事業主として自分ひとりで仕事をしていました。貯金を切り崩しながらキリキリと過ごしていた時期もあれば、事業が順調でストレスフリーで楽しく仕事をしていた時期もある、そんな山あり谷ありのキャリアを歩んでいました。
当時、付き合っていた彼女(現在の奥さん)とは「いつか結婚したいな」とは思いつつも、なかなか結婚に踏み切れずにいました。
ずばり、結婚を踏み切れなかった理由は「お金」です。
ほとんどのフリーランスがそうだと思いますが、私も当時は収入に波があり、良い月も悪い月もありました。また、お恥ずかしい話ですが、30歳を過ぎてもほとんど貯金がありませんでした。(たぶん100万円もなかったと思います)
当時はフリーランスとしてさらに成長し、より良い収入を得るために結構な額の自己投資・事業投資をしていたのもあり、お金に余裕がある状況ではなかったです。
私の中で「結婚する」というのは、経済的に安定していないとできないことだと思っていたため、当時の不安定な収入の自分は「まだ結婚できるレベルにいない」と考えていたのです。
加えて、会社員と比べてフリーランス・個人事業主は社会的な信用力が低いことにも後ろめたさのようなものを感じていました。
同棲&結婚をするタイミングで会社員に転職するキャリアを選択
当時、自分の仕事は収入的に厳しい状況でもありました。年齢的なこともあり、「再就職するとしたら今くらいの年齢のほうが有利かもしれない」と、そんなことを考えていました。
そんな状況の中での「そろそろ結婚したいな」という気持ちだったので、「もっと安定した収入が得られる会社員に転職してみるのも良いのかも」と考えたのです。
この決断に対して、人によっては「同棲や結婚を言い訳に、キャリアをあきらめてダサい」と感じる人もいると思います。というか、私自身が彼女に対して「結婚を言い訳にしているようで嫌だな…」という後ろめたさを感じていたのも事実です。
でも、いま思えば、ここに関してはあまりネガティブに考える必要はなかったと思っています。収入面・年齢・キャリア観など、さまざまな要素が重なって「会社員に転職しようかな」となりつつあったところに、「結婚」というもう一つの大きなきっかけがあっただけです。
ということで、私の場合は、転職活動をして会社員としての就職先を見つけ、新しい仕事が始まる前に引っ越し→同棲、その後、少し落ち着いたタイミングで結婚をしました。このため、入籍したタイミングでは、私は個人事業主ではなく、会社員だったということになります。
同棲&結婚して分かったお金の現実
私の場合、なかなか結婚に踏み切れなかったのは経済的な不安が大きかったからです。ただ、いざ同棲をしてみて分かったのは「同棲したほうがお金は貯まりやすい」ということです。
家にいても在宅デートが成り立つ
一緒に住むと、家にいるだけでも在宅デートが成り立ちます。別々の場所に住んでいる場合、お互いの家を行き来するだけで時間も交通費も結構かかります。
1回1回は小さな出費かもしれません。でも、毎週のように会っているカップルであれば、中長期的に考えれば、交通費が減るのは大きな節約効果があります。
家賃・光熱費が2倍になるわけではない
物件の選択次第ですが、二人で別々に住んでいた時よりも、家賃を抑えることもできます。私の場合は、一人暮らしをしていたときとほぼ同じ家賃で広い部屋に引っ越せたので、家賃の観点でも一緒に住む金銭的なメリットはありました。
光熱費に関しても、一人暮らしで月1万円だったからと言って、二人の場合は単純に月2万円になるかと言うと、決してそんなことはありません。あまり意識しなくても、光熱費も節約できるようになります。
節約意識が高まる
よく聞く話かもしれませんが、一緒に生活することで節約意識が芽生え、お金が貯まりやすくなるメリットはあると思います。それこそ「1年後に結婚式を挙げるために一緒に毎月〇万円貯める」みたいな共通の目標を掲げて、同じ目標に向かって生活していくのも楽しいと思います。
思い切って同棲 or 結婚してしまうのもアリ?
少し乱暴な考え方かもしれませんが、フリーランス・個人事業主が、お金の面でいろいろと悩んで結婚を先延ばしにしてしまうのであれば、思い切ってまずは同棲してしまうのもアリかもしれないと思っています。
後悔しているというほどではありませんが、私も個人事業主としての仕事がある程度、軌道に乗ったタイミングで思い切って結婚しても良かったのかも、と今では少し思います。
私の場合、性格的に「きちんと収入が安定してからでないと結婚してはいけない」といった固い考え方をするタイプだったので、当時、同棲に踏み切れませんでした。ですが、「同棲&結婚したらモチベーションも上がって上手くいくだろう!」と考える人もいると思いますし、今ではその考え方も悪くない気がしています。
フリーランスが結婚したいと思ったら、まず必要なお金を考えてみる
ここからはもう少し具体的にフリーランス・個人事業主が「結婚したい!」と考えたときに出てくる不安・悩みについて、詳細を解説しながら、解決方法をお伝えしていきます。
同棲・結婚に必要な初期費用とは
同棲・結婚をするために必要な初期費用としては、以下のような費用が必要になってきます。
- 引っ越し費用
- 敷金・礼金・仲介手数料
- 前家賃
- 新しい家具や家電
- (中期的には)結納や結婚式などの費用
どちらか一方が、もう一方の家へ移り住んで同棲をする場合、新しく賃貸契約は必要ないので、かかるお金は大きく下がります。新しく家を借りる場合は、前家賃なども含めると結構な金額がここだけで必要になります。
家具や家電については、一人暮らしのときに使っていたものをそのまま使えば節約できます。ただ、そのまますべての家具・家電が使えるか、というと難しいケースが多いと思います。私の場合もそうでしたが、冷蔵庫や洗濯機は一人暮らし用ではあきらかに小さいため買い替えが必要になります。
テレビや掃除機などはそのまま使えると思いますが、物理的に買い替えが必須のもあるので、この辺の出費は見込んでおく必要があります。
同棲することで節約できる部分もある
二人で暮らすことによって、以下のような部分は節約効果が見込めます。
- 家を行き来する交通費
- 食費
- デート代
- 光熱費
- 家賃
食費に関しても、自炊する形にすれば結構な節約効果があります。一人だと食べきれない量の食材でも、二人なら消費できるようになるため、自炊の節約効果が大きくなるイメージです。
家賃に関しては、本気で節約したいのであれば、一人暮らし時代の家賃の合計よりも安い金額で借りられる金額内で物件を探すのをルールにすると良いでしょう。
各々が一人暮らしで家賃7万円で暮らしていたのであれば、次に借りる物件は家賃14万円以下で探す、ということです。そうすれば、一人当たりの家賃負担が減ります。
同棲・結婚の計画立て前に「家計の見える化」が重要
「必要な初期費用を捻出できるかどうか?」は同棲・結婚へ踏み切るための重要なポイントになります。
一方で、初期費用がなんとかなったとしても、その後の毎月の生活のほうが長く続いていくわけなので、次に「毎月の生活コストを問題なく支払えるか」を考える必要があります。
【手取り-(固定費+変動費)=可処分所得】となるため、まずは毎月の生活コストを把握してみることをお勧めします。
極端な話、あなたがフリーランスとして収入面の不安があったとしても、一緒に住むことで家賃を大幅に下げられる余地があるのなら、思い切って一緒に住んでしまうのもアリでしょう。
とにかく、「今後の生活コストとしていくら必要なのか」、「万が一、収入が下がった時にどのくらいまでなら生活が成り立つのか」を把握することが大切です。
フリーランスが同棲時の賃貸審査を通すためにできる事
フリーランス・個人事業主は経済面での不安・心配もあると思いますが、社会的な信用の面でも不安を持っていることが多いと思います。事実、クレジットカードや住宅ローンなど、各種審査時の信用度は会社員と比較して低くなる傾向があります。
私自身も独立してすぐに申し込んだクレジットカードは審査落ちして作れませんでした。もちろん、社会的な信用力は独立後の年数や毎年の収入によって変わってきますが、いざ同棲を考えたタイミングで「賃貸の審査に通るのか?」は現実的に考える必要があります。
もっとも簡単な解決策:相手名義で賃貸契約してもらう
あなたがフリーランス・個人事業主だったとして、お相手の方が会社員であれば、相手名義で賃貸契約をしてもらうのが最も簡単な解決方法です。
私の場合、奥さんと同棲したタイミングでは肩書上は「個人事業主」でした。奥さんは会社員だったため、奥さん名義で賃貸契約をしてもらい、入居審査に関しては特に問題なくスムーズに通過できました。
お互いの合意が取れているのであれば、この方法が同棲初期におけるフリーランス特有の悩みをもっとも簡単に解決できると思います。
フリーランス・個人事業主のままでも賃貸契約は可能
フリーランス同士が同棲・結婚をする場合や、何らかの事情により会社員として働いている人名義での賃貸契約が難しい場合は、「フリーランス・個人事業主」として賃貸契約の審査を受ける形になります。
もちろん、物件や家賃によって変わってきますが、フリーランスでも賃貸審査に通ることは可能です。賃貸で暮らしているフリーランスの方はごまんといるので、当たり前と言えば当たり前な話ですが。
物件や不動産会社にもよりますが、以下のような証明を用意することで、一定以上の収入があることを示せれば普通に賃貸物件を借りられるはずです。
- 確定申告書の控え
- 銀行の預金残高
連帯保証人や保証会社を立てて審査を受ける
フリーランスとしての収入が低く、審査が不安な場合には、連帯保証人や保証会社を立てることで物件の審査を通過する方法もあります。
自分または相手の親御さんが健在で、関係性が良好であれば、連帯保証人になってくれるケースも少なくないでしょう。連帯保証人をお願いできるような相手がいない場合には、保証会社を利用するのも一つの手です。
同棲・結婚をきっかけに“これからのキャリア”を考えてみる
かつての私がそうであったように、同棲・結婚をきっかけに自分自身のこれからのキャリアについて考えてみるのは良いことだと思っています。
当時の私は「結婚をするために個人事業主をやめて会社員に戻るのは何か違うかな…」と心の葛藤のようなものがありました。でも、いま振り返って考えてみると、ライフイベントをきっかけに転職を考えるのはごくごく当たり前のことだと思うのです。
- 結婚をするためにバンドマンを辞めて就職する
- 子供が生まれたので年収がアップする職場に転職する
- 親の介護など都合で勤務体系を変える
など、ライフイベントと仕事は切っても切り離せない関係です。
ここでは「そろそろ結婚したい!」と考え始めたフリーランスの方の今後のキャリアの選択肢をいくつかご紹介します。
選択肢1:フリーランスを続けながら同棲・結婚(家計の見える化を徹底)
同棲・結婚することによる節約効果は間違いなくあります。二人で暮らすことで、単純に生活コストが2倍になるわけではないからです。
であれば、収入面に多少の不安があったとしても、思い切って同棲・結婚することで、節約しながら仕事の収入を増やしていくのも良い選択肢だと思います。私は、この選択を取らなかったのですが、それは単純に性格的な問題であって、いま考えればこの選択もアリだったなと思っています。
それこそ、収入的に安定して結婚をしたとしても、その5年後、10年後には収入に不安を持ってしまう時期が来る可能性もゼロではないわけです。確かに同棲・結婚時の収入は重要です。ただ、「収入の波があったとしても一緒に乗り越えていこう」と思えるようなパートナーとの関係づくりのほうが重要だと思います。
選択肢2:フリーランスとしての収入構造を改善(受託→自社事業へ)
フリーランス・個人事業主を続けていく場合、受託ビジネス(いわゆるクライアントワーク)だけではジリ貧になってしまう可能性が高いため、自社事業にも取り組んでいくのは必須だと考えています。
完全に受託をやめる必要はありませんが、「受託ビジネス+自社ビジネス」のほうが収入基盤が強固になりますので、同棲・結婚を機に自社ビジネスに取り組んでみるのも良いと思います。
フリーランス・個人事業主としての年収が低い状況を改善したい場合には、以下の記事でより詳しく解説しています。
選択肢3:会社員+副業スタイル(安定的な収入の確保を優先)
最後に、当時の私が取った選択肢として「会社員へ転職する(戻る)」があります。
独身のときは、ある意味、自分のことだけを考えていれば良かったかもしれませんが、同棲・結婚すると、そうもいかなくなります。パートナーが普通に安定的な収入を得ていて、経済的に自立した大人であっても、将来的な収入や家族の変化も可能性も出てきます。すると、独身のときよりも、会社員の“安定的な収入”に対する魅力が増します。
私の場合は、そのタイミングでちょうど自分のやっていた事業が傾いてしまっていたのと、それによるモチベーションの低下もあったので、同棲・結婚を機に会社員へ転職する決意をしました。
ちなみに、すでにそれから数年は経っていますが、あのときの選択は良かったのではないかと思います。
「フリーランス・個人事業主×結婚」に関するFAQ
フリーランス・個人事業主が「そろそろ結婚したい!」と考えたときに、よくある質問に対して、私の実体験をもとに回答します。
同棲・結婚するために貯金はいくら必要か?
同棲・結婚後のライフスタイルやどのくらいの物件に引っ越すかによっても異なりますが、最低限50万円くらいは必要になると思います。私の場合、新生活に必要な費用は奥さんと折半で出しましたが、50万円くらいはお金がかかり、ほとんど貯金がなくなった記憶があります。
相手との関係性にもよりますが、極論、貯金がまったくなくても同棲をはじめることは可能です。相手の方に一時的に初期費用を出してもらい、あとで少しずつ返すこともできるでしょう。
どちらかと言うと「同棲後の毎月の生活コストがいくらくらいかかりそうか?」の試算のほうが重要だと思っています。ここを明確にしておかないと、一緒に住み始めてから「自分の毎月の収入が足りない…」となってしまい、最悪、同棲解消になってしまうかもしれません…。
同棲・結婚を機にフリーランス→会社員へ戻るのは“負け”じゃない?
私は(その他の事情もありましたが)同棲・結婚をきっかけに個人事業主から会社員へ戻りました。これに対して「フリーランス・個人事業主としてのキャリアをあきらめたのは負けなんじゃないか」という意見もあるかもしれません。というか、私自身が当時自分に対して「負けなのでは?」と考えていました。
ですが、今では違う考えを持っていて、「会社員→会社員」への転職も、「フリーランス・個人事業主→会社員」への転職も、どちらも同じだと思うのです。別の場所で、別のキャリアに挑戦するだけ、です。
まとめ:フリーランスが結婚したい場合は「収入の安定を待つのではなく、安定させるように再設計して進む」がおすすめ
フリーランス・個人事業主が結婚に踏み切れない理由のほとんどは「収入」だと思います。
一般的な会社員の3倍、5倍も稼げている状況であれば、たとえ社会的な信用が少なかったとしても「なんとかなるだろう」と思える可能性が高いでしょう。ただ、収入面での波があり、そこまで高収入というわけでもないと、同棲・結婚に対する不安が大きくなると思います。
ただし、「フリーランスとしての収入が安定してから結婚を…」と考えていると、安定なんて一生来ない可能性があります。であれば、収入(支出)を安定させられるように自分のライフスタイルやキャリアを再設計して、同棲・結婚に進むのも良いと思うのです。
キャリアで言えば以下のような選択肢があります。
- 思い切って同棲してしまい節約効果を高めて仕事を頑張る
- 収益構造を改善して収入を安定させる
- 会社員+副業スタイルに転身して収入を安定させる
選択肢自体は、どれが正解・不正解というのはありませんが、フリーランス・個人事業主の場合は、今までの単なる延長線上に収入面での安定は存在しないのでは?と個人的には思っています。
同棲・結婚はとても素晴らしいことだと思いますので、そこへ向けて支出を抑えること、収入をより高い次元で安定させるキャリアの方向性を模索してみると良いのではないでしょうか。
ライフイベントをきっかけに、自分の働き方を変えたり、キャリアを考えたりすること自体は誰にとっても良いことだと思います。
